日本石材工業新聞掲載分
「銘石庵治石をふんだんに」

京都心部・JR山手環状線の内側は、土地代が高く、一坪当たり大体、数百万円以上である。したがって、新しく墓地を造るような余地は無い。しかし、それでも戦前からある寺院墓地では、整理・整地し直すと、若干の新墓地を造成する区画が出てくる。 今でも、お寺の都合で新墓地を売り出すことがあり、上野の寛永寺、芝の増上寺、音羽の護国寺のような有名寺院でも、墓地を新たに売り出している。さらに都内何百ヶ寺かある大小各寺院では、それぞれに多少の空き地を持っていて、時折、墓地分譲をしている。 ただし、その場合、各寺院とも新規建立者(入檀者)に対しては、施工石材業者共々、独自の制約を設けており、石材店がお寺に出入りするためには、お寺に対する常日頃の貢献度・実績・信用などがものを言うようになる。つまり、希望通りにいつでも、やたらに建てられるものでもなく、全てはお寺側の都合や判断によって決まるようだ。

高級石塔が並ぶ都内寺院墓地

ここ十数年の間に都内寺院墓地に建てられたお墓は、厳格な条件を満たしたものに限るだけに、概して高級な石塔が多い。そしてその中には、著名人、文化人など、個性あふれるお墓も数多く存在する。さらに各企業のトップクラス、財界の大物クラスのお墓も、都心部の墓地に新たに沢山建てられている。 それらを含め、いわゆる上流社会人(高額所得者)のお墓が多いせいか、都心の墓地には、庵治石、本小松石、あるいはスウェーデン産ファイングレイン等々、最高級材を使ったお墓がかなり多い。それ故に、(永代使用料込み)数千万円以上を要したお墓も珍しくなく、中には一桁以上の一億円前後という超豪華なお墓もある。 東京千代田区有楽町、帝国ホテル直ぐ前の柴ビル9Fに本社を置く(株)ジョウコウ(高瀬秀樹社長)では、最近、先に述べたようなせ成功者の方達、あるいは先祖を大切にする方々を主たる顧客としている。対応面においてもハイクラスの接客を徹底しており、どの顧客からも「想定以上」に、深く感謝されている。その「より良いお墓を勧めること」が。好業績となって現れていると言えよう。

庵治石ずくめN家のお墓

このほど(株)ジョウコウでは東証一部上場の、とある会社の代表取締役会長兼社長・N氏より依頼を受け、東京都港区西麻布にある曹洞宗長谷寺に庵治石ずくめのお墓を建立した。そのN家のお墓が建てられた場所は、都営青山霊園に近く、根津美術館の隣、六本木ヒルズが目の前に見えるところ。六本木や麻布の繁華街に近いにも関わらず、木立に囲まれたオアシスのように街の喧騒から離れ、お墓にとっては最適な静かな地帯といえる。 このお墓は、庵治石の中でも最高級の細目石を主体に使い、かたちは正方形を基調にデザインされている。墓地の広さは幅9.5尺(2.85メートル)、奥行き14.1尺(4.32メートル)で、棹石に相当する部分には庵治石を使用。その基本部分の上石、下石の2ヶだけでも約60切もある。また、後ろ側に立つ屏風状の墓誌石も、同じく庵治石でできており、中心となる二つの石を囲むような形で、庵治石の台座を設置。庵治石だけでなんと100切以上使用されていることになる。 このお墓全体の形は、(株)ジョウコウがデザイン・設計を担当。こうした方々のお墓は、当然一つとして同じ形は許されない。とはいえ、手を合わせる対象物として、あまり奇抜すぎても嫌厭される。 ジョウコウとしては、施主のお住まいやライフスタイルから垣間見えるお人柄を推察して、デザインの中に活かしているそうだ。そしてまた、お墓全体の形の上での微妙な傾斜や丸みは、加工する匠の技があってこそ完成されていくもので、それを上手く組み入れている好例といえよう。 後日談ではあるが、N氏と高瀬社長は、お墓つくりをお手伝いしたご縁で、その後もいろいろお仕事を含め相談されるようになっている。つまり、お墓をおつくりになった施主との打合せでは、お墓作りを通じ施主の心の奥深いところの相談相手となり、人生の生き方そのものをお墓という形で、ある部分を具現化したといえる。 このように高額所得者の中には故郷のお墓以外に身近な東京でお墓作りをして精神的なよりどころを求めている層が出だしている。より良いお墓を建て、祀られている方に感謝され、施主に喜ばれるのが、墓石販売者にとって最大の喜びである。これこそ「石屋冥利に尽きること」と言えるのではないだろうか。

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